生活保護と自己破産、どちらが先?

借金があり生活も苦しい。この場合、生活保護と自己破産のどちらを先に進めるべきか迷う方が多くいます。

実務上は、生活保護の申請を先に行うケースが多いとされています。理由は次のとおりです。

  • まず生活を安定させることが優先されるため
  • 生活保護を受けていると、法テラスの費用立替の返済が猶予・免除されることがあるため
  • 自己破産の手続きには数か月かかるため、その間の生活を支える必要があるため

ただし、状況によって最適な順序は変わります。両方を検討している場合は、福祉事務所と法律の専門家の双方に相談するのが確実です。

借金があっても申請できます

まず前提として、借金があることは生活保護の申請を妨げません。生活保護法には「困窮に至った理由は問わない」という無差別平等の原理があります。

「借金は自己責任だから受けられないのでは」と考える必要はありません。

費用は法テラスで立て替えられます

自己破産には、弁護士費用や裁判所への予納金がかかります。生活に困っている方にとって、これは大きな壁です。

ここで使えるのが法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度です。

受けられる支援

  • 無料法律相談…同一の問題について3回まで無料で相談できます
  • 費用の立替…弁護士・司法書士費用を法テラスが立て替えます

立て替えられた費用は、原則として月額数千円程度から分割で返済します。

生活保護を受けている場合の特例

ここが重要な点です。生活保護を受給している方については、立替金の返済が猶予されることがあります。

さらに、事件が終結した時点でも生活保護を受給している場合には、返済が免除されることがあります。

つまり、実質的な費用負担なしに債務整理を進められる可能性があるということです。費用を理由に諦める必要はありません。

まず相談してみてください

法テラスには電話やウェブから問い合わせできます。収入や資産の要件を満たすかどうかも、その場で確認してもらえます。

自己破産の手続きの流れ

おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 弁護士・司法書士に相談…借金の総額、債権者、収入や資産の状況を伝えます
  2. 受任通知の送付…業者への取り立てが止まります
  3. 書類の準備…住民票、家計の状況、債権者一覧など
  4. 裁判所へ申立て
  5. 審理…財産がない場合は同時廃止という簡易な手続きになることが多くあります
  6. 免責許可の決定…借金の支払義務が免除されます

期間は事案によりますが、数か月程度が一般的です。

免責が認められない場合もあります

ギャンブルや浪費が原因の借金は「免責不許可事由」にあたるとされています。ただし、実際には裁判所の裁量で免責が認められるケースも多くあります。

該当しそうな事情があっても、隠さず弁護士に伝えてください。適切な対応をとることで、結果が変わることがあります。

自己破産すると何が起きるか

不安を持つ方が多い点を整理します。

起きること

  • 信用情報機関に事故情報が登録されます(おおむね5〜10年)。この間、新たな借入やクレジットカードの作成は困難になります
  • 官報に掲載されます
  • 一定期間、特定の職業(警備員、生命保険募集人など)に就けない制限があります
  • 一定額を超える財産は処分されます

起きないこと

  • 戸籍や住民票に記載されることはありません
  • 選挙権は失いません
  • 家族に法的な支払義務が生じることはありません(保証人になっている場合を除く)
  • 勤務先に自動的に通知されることはありません
  • 生活に必要な家財道具まで取り上げられることはありません

「破産すると人生が終わる」というイメージを持つ方がいますが、実際には生活を立て直すための法的な仕組みです。

生活保護への影響

自己破産をしても、生活保護の受給に影響はありません。むしろ借金の負担がなくなることで、生活の立て直しが進めやすくなります。

なお、手続きを始めることと、その結果については、ケースワーカーにも報告しておきましょう。

税金や保険料の滞納はどうなる?

ここは誤解しやすいところです。

税金や社会保険料は、自己破産をしても免除されません。これらは「非免責債権」といって、破産手続きによって消える借金には含まれません。

対象になるのは次のようなものです。

  • 住民税、固定資産税などの税金
  • 国民健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 介護保険料
  • 養育費
  • 故意または重大な過失による損害賠償

ではどうすればいいか

税金や保険料の滞納については、それぞれの担当窓口に相談してください。生活保護を受けている状況であれば、次のような対応が検討されます。

  • 徴収猶予…支払いを一定期間待ってもらう
  • 滞納処分の執行停止…財産の差し押さえなどを停止する
  • 減免…自治体の条例にもとづき、減額または免除する

特に「滞納処分の執行停止」は、生活を著しく困窮させるおそれがある場合に適用される制度です。一定期間が経過すれば、納付義務が消滅することもあります。

放置せず、「生活保護を受けることになった」と伝えて相談してください。事情を説明すれば、取り立てが止まることがあります。

借金の整理は、生活を立て直すための第一歩です。費用や手続きの心配で先延ばしにせず、法テラスやケースワーカーに相談してみてください。

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