「恥ずかしい」と感じてしまう理由

生活保護を検討する方の多くが、金額や手続きよりも先に「人に知られたくない」「情けない」という気持ちで悩みます。

その気持ち自体は自然なものです。ただ、いくつか事実を知っておくことで、見え方が変わるかもしれません。

これは権利です

生活保護は日本国憲法第25条の生存権にもとづく制度で、厚生労働省も「生活保護の申請は国民の権利です」と明言しています。誰かに施しを受けているのではなく、法律で保障された権利を使っているという位置づけです。

困窮の理由は問われません

生活保護法には「無差別平等の原理」があり、困窮に至った理由によって差別されないことになっています。病気でも、失業でも、離婚でも、判断に迷った結果でも、今生活に困っているという事実だけで判断されます。

周囲に知られることはありません

福祉事務所の職員には守秘義務があります。近所の人や勤務先に通知されることはありません。

親族への扶養照会が心配な方も多いと思いますが、これも全員に連絡がいくわけではなく、事情があれば控えられます。詳しくは扶養照会の仕組みをご覧ください。

一時的に使って抜ける人も多くいます

生活保護は一度受けたら一生続くものではありません。生活を立て直して受給を終える方も多くいます。制度の目的にも「自立を助長すること」が含まれています。

体勢を立て直すために一時的に使う、という利用の仕方も想定されています。

「ずるい」という声について

インターネット上では、生活保護に対する批判的な意見を目にすることがあります。実際に利用を考えている方にとっては、気になるところだと思います。

不正受給は全体のごく一部です

不正受給の報道は目立ちますが、件数・金額とも生活保護費全体から見ればごく一部にとどまります。また、その多くは高校生のアルバイト代の申告漏れなど、意図的とは言い難いケースを含んでいます。

不正受給が起きた場合には、返還に加えて最大40%の上乗せ徴収という仕組みも法律に定められています。

批判の多くは制度の理解不足から来ています

「働かずに遊んで暮らせる」といったイメージが語られることがありますが、実際の支給額は最低限度の生活を想定したものです。また、受給中は収入の申告義務があり、定期的な訪問調査もあります。

就労可能な方には就労支援が行われ、状況に応じた指導も入ります。

年金や給料より高いのはおかしい?

「国民年金より生活保護の方が高い」という指摘はよく聞かれます。これは事実として、単身の場合に生活保護の方が高くなるケースがあります。

ただし、これは制度の性質が違うことから生じています。

  • 年金…納めた保険料に応じて給付される保険の仕組み。老後の生活費の一部を補うことが想定されています
  • 生活保護…最低限度の生活を保障する仕組み。足りない分を補うことが目的です

そのため、年金を受け取りながら生活保護を利用することもできます。年金額が最低生活費に届かない場合、その差額が支給されます。年金があるから受けられない、ということはありません。

最低賃金との関係

働いても生活保護の水準に届かない、という状況(いわゆる逆転現象)は、制度上望ましくないとされ、最低賃金を決める際にも考慮する規定が設けられています。

また、働いている方が生活保護を利用することも可能です。収入が最低生活費に届かなければ、その差額を受けられます。実際に、働きながら受給している世帯は少なくありません。

本当に必要な人に届いているのか

あまり知られていませんが、生活保護は「使われすぎている」より「使われていない」ことの方が問題視されています

生活保護の水準以下で暮らしている世帯のうち、実際に受給している世帯の割合は「捕捉率」と呼ばれ、日本ではこれが低いことが長く指摘されてきました。

理由としては、次のようなものが挙げられています。

  • 制度を知らない、自分が対象だと思っていない
  • 周囲の目が気になる
  • 家族に知られたくない
  • 窓口で断られた経験がある

つまり、受けられるはずの人が受けていない状況があるということです。ためらっている方が申請することは、制度の趣旨に沿った行動です。

貧困ビジネスに注意

最後に、実際的な注意点をひとつお伝えします。

生活保護受給者を狙った「貧困ビジネス」と呼ばれる問題があります。住まいのない方に劣悪な宿泊施設を提供し、保護費の大部分を利用料として徴収するようなケースです。

気をつけたいパターン

  • 路上や駅などで声をかけられ、「住まいを世話する」と言われる
  • 申請に同行する見返りとして、高額な手数料を求められる
  • 保護費の管理を任せるよう求められる
  • 通帳やキャッシュカードを預かると言われる

保護費は本人が受け取り、本人が管理するものです。第三者に通帳やカードを預ける必要はありません。

安心して相談できる先

  • 市区町村の福祉事務所
  • 自立相談支援機関
  • 社会福祉協議会
  • 法テラス(日本司法支援センター)
  • 実績のある支援団体

民間の支援団体にも、長年まっとうな活動をしている信頼できるところが多くあります。判断に迷ったら、まず公的な窓口に相談し、紹介を受けるのが安全です。

制度への批判的な声を気にして、必要な支援をためらう必要はありません。生活を立て直すことが、結果的にご自身にとっても社会にとっても良い結果につながります。

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