この記事でわかること
医療扶助とは
病気やけがの治療にかかる費用を支える扶助です。窓口での自己負担は原則としてかかりません。
厚生労働省の説明でも、医療扶助について「費用は直接医療機関へ支払、本人負担なし」と明記されています。
現金ではなく「現物給付」です
生活扶助が現金で支給されるのに対し、医療扶助は現物給付という方式です。本人にお金が渡されるのではなく、福祉事務所から医療機関へ直接支払われます。そのため窓口でお金を払う必要がありません。
国民健康保険からは外れます
生活保護を受けると、国民健康保険の被保険者から除外されます。保険料が免除されるというより、そもそも加入者でなくなるため保険料が発生しません。医療は医療扶助でまかなわれる形に切り替わります。
なお、会社の健康保険に加入している場合は、資格を失うとは限りません。他の医療保険が使える場合は、その給付が医療扶助に優先します。
対象になる医療
生活保護法では、医療扶助の範囲を次のように定めています。
- 診察
- 薬剤または治療材料
- 医学的処置、手術その他の治療、施術
- 居宅における療養上の管理および看護
- 病院または診療所への入院と、それに伴う看護
- 移送(通院や入退院のための交通費)
実際の給付内容は、健康保険の診療方針に準じた扱いになります。つまり保険が使える治療であれば、原則として医療扶助の対象と考えて差し支えありません。
歯科治療も対象です
虫歯の治療、抜歯、入れ歯なども、保険適用の範囲であれば対象になります。歯の治療は放置すると悪化しやすいので、費用を心配して我慢する必要はありません。
精神科の通院も対象です
精神科・心療内科の受診、カウンセリング、服薬も対象です。なお、精神疾患の通院医療については自立支援医療という別の制度があり、そちらが優先される場合があります。
対象にならない費用
「医療費が無料」といっても、あらゆる費用が対象になるわけではありません。次のようなものは、医療上の必要性が認められない限り対象外です。
- 本人の希望による差額ベッド代(個室料)
- 自由診療、保険がきかない治療
- 美容整形
- 健康診断、人間ドック
- 予防接種
- 診断書などの文書料
- 指定を受けていない医療機関での通常の受診
迷う費用は事前に確認を
個別の費用が対象になるかどうかは、病状や医療上の必要性によって判断が分かれることがあります。差額ベッド代なども、治療上の必要から個室に入る場合は扱いが変わることがあります。
高額になりそうな費用が発生しそうなときは、受診前に福祉事務所へ確認してください。
受診するときの手続き
保険証を出せば受診できる一般の医療とは、手続きが異なります。
基本の流れ
- 福祉事務所に連絡し、受診したい旨を伝える
- 医療券を発行してもらう
- 医療券を持って医療機関を受診する
2024年3月からはマイナンバーカードによるオンライン資格確認も始まっており、対応している医療機関ではマイナンバーカードで受診できます。ただし対応状況は医療機関によって異なります。
指定医療機関を受診します
原則として、生活保護法の指定を受けた医療機関を受診します。多くの病院・診療所・薬局が指定を受けていますが、かかりつけの医療機関が指定を受けているかどうかは福祉事務所で確認できます。
急病のときは
夜間や休日に急病になった場合、事前に医療券をもらう余裕がないこともあります。そうした場合の対応方法は自治体によって異なるため、保護の開始時にケースワーカーへ確認しておくと安心です。
緊急時はまず受診し、後日速やかに福祉事務所へ連絡するという流れになるのが一般的です。
薬・入院・通院交通費
薬代
処方された薬の費用も医療扶助の対象で、自己負担はありません。調剤薬局で受け取る際も医療券(調剤券)を使います。
なお、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある場合は、原則として後発医薬品が処方・調剤されることになっています。
入院費
入院にかかる費用も対象です。ただし入院中は食事が提供されるため、その分の生活扶助が調整され、代わりに入院患者日用品費(月額23,670円以内)が支給される形になります。
通院にかかる交通費(移送費)
通院や入退院のための交通費は、移送費として支給されることがあります。ただし自動的に出るものではありません。
- 公共交通機関を使うことが原則
- 最も経済的な経路・方法であること
- 事前に福祉事務所の承認を得ること
タクシーの利用は、歩行が困難であるなどの事情がある場合に限られます。定期的な通院が必要な方は、開始時にまとめて相談しておくとよいでしょう。
他の制度との関係
生活保護には「他の制度が使える場合はそちらを優先する」という原則があります。医療についても同じで、次のような制度が使える場合はそちらが先になります。
- 自立支援医療(精神通院医療、更生医療、育成医療)
- 難病の医療費助成
- 労災保険(仕事中のけがや病気)
- 感染症法による公費負担
- 会社の健康保険など、加入している医療保険
これらの制度でまかなえない部分について、医療扶助が適用されます。どの制度が使えるか分からない場合も、福祉事務所で整理してもらえます。
高額療養費制度との関係
健康保険に加入したまま生活保護を受ける場合、高額療養費制度が適用され、その自己負担分に医療扶助があてられる形になります。
医療費の心配で受診を控えている方こそ、生活保護を検討する価値があります。治療が遅れて重症化すると、生活の立て直しがさらに難しくなります。まずは窓口で相談してみてください。
あわせて読みたい