不正受給問題と水際作戦

不正受給問題と水際作戦の関係

 

生活保護問題の1つである水際作戦は、職員一人ひとりの偏見や知識不足はもちろん、世間の誤解も原因となっています。

 

とはいえ、生活保護費には国民が納めている税金が使用されていますし、生活保護に携わる職員の給与は各自治体の予算から出ているので、「生活保護をむやみやたらに使わないでほしい」と思う気持ちは間違いではないのかもしれません。

 

ここからは、

  • 水際作戦による死亡例
  • 不正受給で話題となった事例

などを見ていきましょう。

水際作戦による死亡例

各自治体や職員による考え方に違いで水際作戦を実行し、助かるはずの命が失われた事例はいくつもあります。ここでは、2つの死亡例を紹介していきますのでご覧ください。

2007年7月10日 福岡県北九州市
職員が生活保護受給者である52歳の男性に就職したと虚偽の申告をさせ、生活保護を打ち切りました。その3ヶ月後に男性は死亡。死因は餓死でした。読売オンラインによると、「オニギリ食いたい」と書き残していたといいます。

 

男性は2006年10月までタクシー運転手として勤務していました。しかし、病気により働けなくなり、同年に生活保護申請をしています。一度は受給できたものの、翌年にケースワーカーから働くよう勧められ、男性は生活保護を辞退。おにぎり1つ買うこともできず亡くなってしまった背景には、市全体で生活保護の適正化を推し進めたことがありました。

 

生活保護受給者を自立させるために、ケースワーカーが声かけを行うこと自体はとても重要なことです。しかし、それに伴い、生活保護を辞退しても生活していけるのか検討したり、受給者と十分話し合ったりすることも必要です。

 

生活保護の適正化とはいったい何なのかを考えさせられる事例でした。

 

2010年8月15日 埼玉県さいたま市
当時、年金だけで病気の息子と生活していた76歳の男性が死亡しました。亡くなった原因は熱中症。2000年から電気代が払えなくなり、電気が止められていたといいます。十数年前に生活保護の申請をしたことがあったものの受理してもらえず、それから生活は常に困窮した状態でした。

 

要保護者の条件を満たしていても救いの手が差し伸べられないのであれば、生活保護制度は本来の役目を果たしていないことになります。その後、再発防止のために新たな取り組みや原因究明が行われています。

不正受給で話題となった事例

事実とは異なる申告をして生活保護を受給することは不正受給とみなされます。また、受給中に収入を得たことを申告しなかったりしても不正行為となります。

 

しかし、これらのルールが正しく理解されず、社会的な問題として取り上げられるケースは少なくありません。

 

ここでは、

  • 次長課長の河本準一さんの母親の不正受給騒動
  • 不正受給した3児の母親が逮捕された事例
  • 外国人による不正受給問題

について説明していきます。

次長課長・河本準一さんの母親の不正受給騒動

2012年、女性週刊誌『女性セブン』に掲載された記事によると、次長課長の河本準一さんの母親が生活保護を受けていたようです。この件に関しては自民党の参議院議員などからも問題視され、かなり追及されています。

 

 

当時、河本さんの年収は推定5,000万円ともいわれており、それほど稼いでいるのに母親に援助しないのかと話題になりました。親しい間柄の友人らに、「タダでもらえるならもらっておけばいい」というようなことを話していたとされ、生活保護に対する考えの甘さを指摘されています。

 

しかし、報道されているほど多くの保護費は受け取っていないことや、河本準一さんの収入が増え始めた年からの保護費の返還をしたことなども発表されており、2020年現在では、この一件が話題に上がることはなくなりました。

 

また、河本さんの母親は病気になり働くことができなくなったことが原因で生活保護を受けていました。この時、自ら福祉事務所に相談に行き、息子である河本さんの元にも連絡がいっています。当時はまだ年収100万円程度で、自分の生活で精一杯だった河本さんは「援助できない」と話していました。

 

つまり、母親はまっとうな理由で生活保護を受給しているということです。問題は、河本さんが援助してあげられる状況になっても、生活保護費を減額したり、受給停止したりしなかった点にあります。

 

例えば、母親との関係が悪く援助を希望しない場合には、このようなトラブルは起きません。しかし、河本さんと母親の関係は良好だったため、「どうして生活保護を受けさせているのか」と思われてしまったのです。援助できるのに正当な理由なく拒否すると、後から不正受給だと指摘されてしまう可能性があることを理解しておきましょう。

不正受給した3児の母親が逮捕

「生活保護費を受け取って家を建てる」実際に可能なのかと疑問に思ったことはありませんか?

 

 

実は、生活保護費で家を購入すること自体は不正受給には当たらないといわれています。しかし、嘘の申告をしたり、提出する書類を偽造したりすることは重い罪になるのです。

 

「ナマポ御殿」というワードを見聞きしたことがある方もいるでしょう。2012年、49歳の女性が不正受給をして一軒家を購入したというニュースが報道されました。

 

女性は生活保護を受給しながら3人の子どもを育て、生活保護費がもらえる範囲内で仕事をしていたといいます。しかし、看護助手として働きだし、毎月の収入が20万円ほどになった頃から様子が変わり、嘘の申告をし始めたのです。

 

女性が犯してしまった過ちは、

  • 働いているのに働いていないと言った
  • 看護助手の勤務で月に20万円ほど稼いでいたのに2万7,000〜5万3,000円の収入として申告した
  • 働いていない喫茶店からの給与明細書を偽造して提出していた
  • 給与明細書の偽造には喫茶店から無断借用した印鑑を使用していた

このようなものがあります。

 

通常、事実とは異なる申告をして生活保護を受け取っていたとしても、バレたら返還請求されたり受給停止となったりするのが一般的で、必ずしも逮捕されるわけではありません。しかし、この女性は嘘の申告をするために書類を偽造しており、悪質だとみなされました。結果、詐欺および有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕されたのです。

 

家の購入名義が本人とは異なる場合には、生活保護費を使ったのかどうかを追究できないことも問題として取り上げられています。本来、最低限度の生活を保障するための制度であるのに、正しく利用できない受給者は後を絶ちません。

外国人による不正受給問題

生活保護を受給できるのは日本人だけではありません。例えば、韓国人や朝鮮人、中国人などの在日外国人も生活保護を受けられます。しかも、日本人よりも支給率が高く問題視されているのです。

 

 

在留資格がある外国人が生活に困窮し、生活保護費を受け取る分には問題ないのですが、不正受給が相次いでおり、防ぐ方法はないのかと議論され続けています。受給者の母数が大きいため不正受給の数も多いともいわれています。

 

実際にニュースで取り上げられた事例を見てみましょう。

 

2013年、無収入と偽り生活保護を受給していたとされる中国人の夫婦が逮捕、起訴されました。夫婦は無職で収入がないと申告し、2005年から生活保護を受給し始めましたが、その後複数の預金口座の存在が発覚。合計すると約4,100万円ものお金が入金されていました。

 

夫婦の主張としては、家族が振り込んだものや一時的に預かったものであるとのことでしたが、中国で所有していたマンションを売却したために得られた金銭であることが判明。この場合、売却時に得たお金は収入となり、申告しなければいけないことになっています。

 

不正受給となった金額は約1,000万円。資産を正しく調査、把握することの重要性が叫ばれています。とはいえ、さまざまな方法で調べても問題が見つからないことも多いのが事実です。「不正が見抜けないなら外国人に支給しなければいい」という声も上がっています。

受給をめぐってさまざまなトラブルが起こっている

これらの事例以外にも、母子家庭に対する不適切な対応が行われていたり、「水商売や風俗嬢として働けばいい」などの発言があったりとトラブルが多発。また、生活保護を受給している世帯での知識不足から不正受給となってしまう事例もあります。

 

 

例えば、高校生になった子どもが修学旅行費や部活動のためにアルバイトをしていたが、収入として申告していなかったという事例は漫画にもなっています。この件は結果的に不正受給とみなされ、保護費を全額返還するよう請求されてしまいました。家族全員の知識や認識が十分でないことが問題視されています。

 

生活保護問題はいろいろな角度から原因を探り、対策を講じなければいけません。これから生活保護を受給したいと考えている方も、すでに受給中の方も、制度を正しく活用するために情報を集めておくことが大切です。

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