資産に対する基本的な考え方
生活保護には「補足性の原理」があり、利用できる資産は活用したうえで、なお足りない分を保護するという考え方が基本です。
ただし、これは「持っているものを全部手放せ」という意味ではありません。実施要領では、次のような場合は保有を認めるとされています。
- 現に最低生活の維持に活用されており、処分するより持っている方が生活の維持や自立に役立つもの
- 近い将来に活用されることがほぼ確実なもの
- 処分することができない、または著しく困難なもの
- 売却代金より売却にかかる費用の方が高いもの
- 社会通念上、処分させることが適当でないもの
つまり、日常生活に必要なものは持ったままで構わないということです。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、スマートフォン、パソコンなどは保有が認められます。
預貯金はいくらまで持てる?
まず知っておいていただきたいのは、「預貯金は◯万円まで」という全国一律の上限額は存在しないということです。
ただし、申請時と受給中とで考え方が異なります。
申請するとき
保護開始時の手持ちのお金については、最低生活費(医療扶助・介護扶助を除く)のおおむね5割までを当面の生活費として配慮する取り扱いがあります。それを超える分は、活用すべき資産として扱われます。
たとえば最低生活費が月12万円の世帯であれば、6万円程度までは手元に残せる計算です。
逆にいえば、所持金がゼロにならないと申請できないわけではありません。「お金がまったくなくなってから」と待つ必要はなく、生活が立ち行かなくなりそうな段階で相談して構いません。
受給が始まったあと
支給された保護費をやり繰りして貯めたお金については、一律の上限額はありません。判断されるのは次のような点です。
- そのお金の出どころが、支給された保護費のやり繰りによるものか
- 使う目的が生活保護の趣旨に反していないか
- 目的に照らして金額が妥当か
家電の買い替え、転居費用、更新料、子どもの入学準備、就労準備の費用などは、認められやすい目的です。
まとまったお金を貯める予定があるなら、目的と目標額を先にケースワーカーへ伝えておくと確実です。
生命保険は解約しないといけない?
解約返戻金のある保険は、原則として解約して生活費にあてることになります。ただし例外があります。
次の2つの目安を満たす保障目的の保険であれば、解約せずに保護を受けられる場合があります。
- 解約返戻金が、医療扶助を除く最低生活費のおおむね3か月分以下
- 保険料が、医療扶助を除く最低生活費のおおむね1割以下
これは厚生労働省の事務連絡が示している目安です。機械的な基準ではなく、個別の事情を踏まえて判断されます。
対象になるのは死亡保障や医療保障といった保障を目的とする保険です。貯蓄性の強い養老保険などは認められにくくなります。
保有が認められた場合の注意点
解約せずに継続できた場合でも、後日、満期保険金や解約返戻金を受け取ったときには、保護開始時点の解約返戻金相当額について返還を求められます。この点は事前に説明されるはずですが、覚えておいてください。
学資保険には特例があります
学資保険については、次の条件を満たせば解約せずに保護を受けられます。
- 同じ世帯の子どもが18歳以下のときに満期保険金を受け取る契約であること
- 使い道が子どもの就学費用であること
- 保護開始時点の解約返戻金が1世帯あたり50万円以下であること
持ち家・土地がある場合
持ち家があるだけで生活保護を受けられないわけではありません。
現に住んでいる家については、処分価値が利用価値に比べて著しく大きい場合を除き、住み続けながら受給できるのが原則です。売却して家を失うより、住み続けた方が生活の維持に役立つと考えられるためです。
「固定資産評価額が◯万円以下なら保有できる」といった全国一律の基準はありません。
処分を求められることがあるケース
- 現に住んでいない不動産(別荘、空き家、貸家、利用していない土地)
- 処分価値が利用価値に比べて著しく大きい住宅
- 容易に売却でき、売却後も適切な住居を確保できる場合
住宅ローンが残っている場合
これは注意が必要です。ローン返済中の住宅については、保護費からローンを返済することになってしまうため、原則として保護の適用は難しいとされています。
住宅扶助は家賃や地代にあてるもので、ローンの元金返済を公費で行う制度ではないためです。
ただし、残債の状況や売却の可能性、健康状態などによって判断が変わることもあります。該当する場合は、状況を詳しく説明して相談してください。
高齢者世帯の場合
一定の資産価値がある居住用不動産を持つ高齢者世帯については、生活保護に優先して、社会福祉協議会の不動産担保型生活資金(自宅を担保に生活費を借りる制度)の利用が検討されることがあります。
ただし、福祉事務所が「使えるはずだ」と考えただけで保護を却下することはできません。社会福祉協議会の審査で借りられなかった場合は、通常の基準で改めて判断されます。
その他の資産の扱い
自動車
原則として保有は認められませんが、障害のある方の通院・通勤、公共交通機関の利用が著しく困難な地域での通勤など、一定の要件を満たせば例外的に認められます。
すぐに売れない資産がある場合
不動産のように価値はあってもすぐに現金化できない場合、先に保護を開始し、売却できた時点で返還を求めるという取り扱いがあります。
「売れる資産があるから」という理由だけで、今困っている人が門前払いされるわけではありません。
貴金属・株式など
換金価値の高い貴金属、骨董品、株式などは、原則として処分の対象になります。ただし、処分価値の小さいものは保有が認められます。
資産の扱いは個別性が高く、一律に判断できないものが多くあります。手放すべきか迷うものは、自己判断で処分せず、まず窓口で相談してください。
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